胎児手術中に行われる世界初の二分脊椎幹細胞治療

手術と幹細胞を組み合わせた世界初の二分脊椎治療を受けて、3人の赤ちゃんが誕生した。これは、UC Davis Health での画期的な臨床試験によって可能になりました。

胎児が母親の子宮内でまだ発育している間に施されるこの他に類を見ない治療法は、この先天性欠損症を持つ子どもの転帰を改善する可能性がある。

2021年春に開始されたこの臨床試験は、正式には「CuRe試験：脊髄髄膜瘤の子宮内修復のための細胞療法」として知られている。合計35人の患者が治療を受ける予定だ。

この試験でこれまでに生まれた3人の赤ちゃんは、研究チームによって生後30カ月まで観察され、この処置の安全性と有効性が十分に評価される予定だ。

この試験の第 1 段階は、州の幹細胞機関であるカリフォルニア再生医療研究所 (CIRM) からの 900 万ドルの州補助金によって資金提供されています。

「この臨床試験は、これから来る非常に多くの患者の生活の質を向上させる可能性があります」と、テキサス州オースティンから参加するために旅行した最初の臨床試験参加者であるエミリーは語った。昨年10月に娘のロビーちゃんが誕生した。「私たちは診断されるまで二分脊椎症について知りませんでした。この活動に参加できたことにとても感謝しています。私たちは娘に明るい未来への最高のチャンスを与えています。」

骨髄髄膜瘤としても知られる二分脊椎は、妊娠の初期段階で脊椎組織が適切に癒合しない場合に発生します。先天性欠損症は、生涯にわたるさまざまな認知障害、運動障害、泌尿器障害、腸障害を引き起こす可能性があります。米国では毎年 1,500 ～ 2,000 人の子供が罹患しています。超音波検査で診断されることが多いです。

出生後に行われる手術は影響の一部を軽減するのに役立ちますが、出生前に手術を行うと、妊娠中に悪化する胎児の脊椎損傷の重症度を予防または軽減できます。

「私はこの日を目指して25年近く努力してきました」と世界初の女性胎児外科医であり、カリフォルニア大学デービス校の教授兼外科部長であり、この研究の主任研究者でもあるダイアナ・ファーマー氏は語った。

2000年代初頭の脊髄髄膜瘤管理研究（MOMS）臨床試験のリーダーとして、ファーマー氏は以前、胎児手術により二分脊椎による神経障害が軽減されることの証明に貢献した。その研究では多くの子供たちが改善を示しましたが、依然として車椅子や脚の装具が必要でした。

ファーマーは、その研究を次のレベルに引き上げるために、特にバイオエンジニアの Aijun Wang を採用しました。彼らは協力して、幹細胞と生物工学を利用して手術の有効性を高め、結果を改善する方法を見つけるために、UC Davis Health Surgical Bioengineering Laboratory を立ち上げました。ファーマー氏はまた、数年前に胎児外科医の広瀬進次郎氏とカリフォルニア大学デービス校胎児ケア・治療センターとカリフォルニア大学デービス校小児外科センターを立ち上げた。

ファーマー、ワンおよび彼らの研究チームは、胎児の手術に幹細胞を使用する新しいアプローチに 10 年以上取り組んできました。長い間、動物モデルにより、二分脊椎に関連する麻痺を予防できることが示されてきました。

幹細胞は、外科手術だけで達成できる以上に、損傷した脊髄組織を修復し、回復させるように機能すると考えられています。

ファーマー氏とワン氏らの予備研究では、出生前手術とヒト胎盤由来間葉系間質細胞を組み合わせ、生体材料の足場で固定して「パッチ」を形成すると、二分脊椎を患う子羊が目立った障害なく歩行できることが証明された。

「幹細胞を与えられた赤ちゃん羊が生まれたとき、彼らは生まれたときから立つことができ、ほぼ普通に走り回ることができました。驚くべきことでした」と王氏は語った。

研究チームが犬の手術と幹細胞技術を改良したところ、この治療により自然に発生した二分脊椎を持つ犬の可動性も改善されました。

ダーラとスパンキーという名前のイングリッシュブルドッグのペアは、手術と幹細胞による治療に成功した世界初の犬でした。この犬種によく見られる先天異常である二分脊椎症により、後肢の機能がほとんど損なわれることがよくあります。

生後4か月の手術後の再検査では、ダーラとスパンキーは歩いたり、走ったり、遊んだりすることができました。

エミリーと夫のハリーは、自分たちが初めての親になると知ったとき、妊娠中に合併症が起こるとはまったく予想していませんでした。しかし、エミリーが発達中の子供が二分脊椎症であることを知った日は、彼女が初めてCuRe試験について聞いた日でもありました。

エミリーにとって、それは断ることのできない命綱だった。

治験に参加するということは、胎児の手術のために一時的にサクラメントに移動し、その後妊娠中は毎週の経過観察を受ける必要があることを意味する。

スクリーニング、MRI スキャン、面接の後、エミリーは裁判への参加が認められたという人生を変えるような知らせを受け取りました。彼女の胎児の手術は、2021年7月12日、妊娠25週5日で予定されていた。

ファーマー氏とワン氏のチームは、CIRMが資金提供するカリフォルニア大学デービス校の再生治癒研究所で胎盤組織から臨床グレードの幹細胞（間葉系幹細胞）を製造している。この細胞は、再生医療において最も有望な種類の細胞の一つであることが知られています。

このラボは、人体への安全な使用を目的とした適正製造基準 (GMP) ラボです。ここで、エミリーの胎児手術用の幹細胞パッチが作成されました。

「幹細胞パッチを作成するには4日間のプロセスです」と、幹細胞パッチを作成して手術室に配送するチームを率いる、外科部門外科生物工学センターの科学者プリヤ・クマール氏は語った。。「細胞を引き抜く時間、足場に播種する時間、そして配達する時間はすべて重要です。」

エミリーの歴史的な手術中、40人からなる手術・細胞準備チームは、長い間準備してきた慎重なダンスを披露した。

エミリーさんに全身麻酔をかけた後、子宮に小さな穴を開け、脊椎と二分脊椎欠損を露出させるために胎児をその切開点まで浮かせた。外科医は顕微鏡を使用して慎重に修復を開始した。

そして、決定的な瞬間が訪れました。幹細胞パッチは、胎児の露出した脊髄の上に直接配置されました。その後、胎児外科医は切開部を閉じて組織が再生できるようにしました。

「幹細胞パッチの貼付は問題なく完了しました。母親と胎児はうまくいきました!」農夫は言いました。

チームは、この種のものとしては初めての手術が成功したと宣言した。

ダイアナ・ファーマー

2021年9月20日、妊娠35週5日で、ロビーは体重5ポンド10オンス、体長19インチで帝王切開で誕生した。

「最初に心配したのは、彼女に会えないのではないかということでしたが、彼らが彼女を私のところに連れてきてくれました。初めて彼女のつま先が小刻みに動くのを見ることができました。とても安心しましたし、少しこの世のものとは思えませんでした」」とエミリーは言いました。

ファーマーにとって、この日は長年待ち望んでいた日であり、驚きも伴いました。もしロビーが治療を受けずにいたら、彼女は足に麻痺を持って生まれてくると予想されていた。

「彼女が生まれた瞬間、彼女が足を蹴っているのは非常に明白で、『なんてことだ、足の指を小刻みに動かしているようだ！』と言ったのをはっきりと覚えている」とファーマーさんは述べ、この観察は公式の確認ではないと述べた。、しかし、それは有望でした。「それはすごかったです。私たちは『これが見えているのですか？それは本物ですか？』と言い続けました。」

母子ともに自宅におり、健康状態は良好だという。ロビーはちょうど1歳の誕生日を迎えたところです。

CuReチームは結論を出すことに慎重であり、試験のこの安全段階ではまだ学ぶべきことがたくさんあると述べている。研究チームはロビーと他の赤ちゃんが6歳になるまで観察を続け、生後30か月の時点で歩行やトイレトレーニングができているかどうかを確認する重要な検査を行う予定だ。

「この経験は人生よりも大きく、あらゆる期待を上回りました。この治験がこれから訪れる多くの患者の生活の質を向上させることを願っています」とエミリーさんは語った。「私たちは歴史の創造の一部になれることを光栄に思います。」